HIV/エイズ
2004年、約500万人がヒト免疫不全ウイルス(HIV)に新たに感染し、最初のエイズ患者が確認された1981年以来のHIV感染者数は、累計で約7800万人に達した(1)(図1参照)。また、HIV関連疾患での累積死亡数は、300万人以上増加し、3400万人となった(2)(図2参照)。 エイズほど人々を衰弱させ死に至らしめる病気を人類はこれまで経験したことがない。死亡者の90%近くは生産年齢の人々で、エイズは世界中の15歳から49歳の成人の主な死因である(3)。エイズ感染がもっとも深刻な7か国は、いずれもサハラ砂漠以南のアフリカ諸国であるが(図3参照)、主にエイズが原因で5年ごとに10〜18%もの生産年齢人口を失っている(4)(ちなみに先進国では、おおよそは5年ごとに約1%の生産年齢人口が失われている)(5)。 もっとも深刻な国では、HIV/エイズが恐るべき広がりをみせ、政府機関、軍隊、学校、工場、農場、医療施設の活動を阻害している(9)。ボツワナとジンバブエでは、生殖年齢の1/3の成人がHIVに感染しており、とりわけもっとも深刻である(10)。ボツワナで最大のダイアモンド会社であるデブズワナ社では、1996〜99年のあいだに、エイズによる死亡数が3倍になった(11)。 およそ20の発展途上国(その大半がサハラ砂漠以南のアフリカ諸国)では、軍隊の15%以上がHIVに感染していると推定される(12)。軍隊のHIV感染率が、一般市民の感染率をはるかに上回る国もあり、ジンバブエでは、いまや除隊した兵士の約3/4が1年以内にエイズで死亡している(13)。 国際労働機関(ILO)は、治療が行われない限り、2015年までに世界で7400万人もの労働者が、エイズ関連疾患で死亡する恐れがあると予測している(14)。最大のHIV/エイズ感染者数を抱える南アフリカ共和国では、雇用主たちは現在、経済学者が「エイズ税」と表現する、再三にわたる有給休暇や医療給付、葬式費用の給付、新入社員の教育などへの追加経費に直面している(15)。1992〜2002年のあいだに、同国の経済は、労働力減少のために毎年約70億ドルが失われた(16)。 インドでは、感染率は生殖年齢人口のわずか1%にすぎないが、数にすると現在約510万人のインド人が感染しており、世界で第2番目の感染者数を抱える国である(20)。また、中国でのさらなる蔓延によって、東アジアのHIV感染者数は、2002年から2004年にかけて約50%急増し、110万人となった(21)。 ロシアでは、ドラッグ常用者の増加とその注射針の回し使いの増加がHIV/エイズの急激な蔓延の原因である(22)。世界銀行によると、適切な防止計画がなければ、2010年までに毎年HIV/エイズで65万人ものロシア人が死亡する可能性があり、その数は1981年以来のアメリカのエイズ死亡数より多い(23)。 HIV/エイズへの世界的な資金拠出は、2001〜2004年のあいだで約21億ドルから61億ドルへ増加し、エイズ教育と重要な予防手段へのアクセス、そしてケアサービスは大きく改善された(24)。 また、発展途上国73か国の調査によると、抗レトロウイルス療法を受ける人々の数は、2001年から56%急増している(25)。しかし、感染がもっとも深刻な国の多くでは、不十分な資金や政治的な指導力の不足が、依然として進展を阻んでいる。 (Lisa Mastny) 関連記事
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