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Cover Story

人口大国のインドと中国にエイズがやってきた
世界でもっとも人口の多い両国はこの流行にどう対処するのか?

アン・ハング(AunHwang)

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人類の悪夢

  1348年、おそらく中央アジアに発したと思われるペストがヨーロッパに到達し、それから数年のうちに2500万人の命を奪った。しかしまもなく、エイズの死者数はこのペストの犠牲者数を超えるだろう。20年ほど前にエイズが現れてからすでに2000万人以上が死亡し、5000万人以上が感染している。現在も11秒に1人がエイズで死亡している。世界保健機関(WHO)の統計によると、エイズによる現在の年間死亡数は、他のどの感染症より多い。エイズは人類史上、最悪の流行病の一つとなったのである。
エイズはペストにくらべて、流行するまでにかなり時間がかかったが、居座る力ははるかに強い。ペストの流行はすさまじかったが、その期間は比較的短かった。ペスト菌は、それ自体が短期間に弱る傾向がある。いずれにしろ人類のあいだでは、もうペストの大流行が起きる心配はない。世界の一部の地域ではまだペストで死ぬ人がいるが、大陸規模で広まることはない。万が一そういうことが起きたとしても、いまは抗生物質があるので650年前のような惨事にはならないはずだ。だがエイズを引き起こすウイルス(HIV)は、人類をつかんだその手を緩める気配がまったく見えない。実のところ、人類のあいだをものすごい勢いで走り抜けながら、次々と新しいかたちに変化しているのである。しかも、現在は感染者を(少なくとも治療を受ける余裕のある人を)延命させる薬はあるが、完全に治す薬はないし、ワクチンもない(26ページの『エイズワクチン?魔法のカプセルはない』参照)。
エイズの流行では、サハラ以南アフリカが14世紀半ばのヨーロッパと同じ状況になった。この病気に関する無知、貧困、戦争、性行動に対する比較的自由な気風(とくに男性の)などの要因が、アフリカ社会にHIVを爆発的に広める結果となった。1996年、エイズ国連共同プログラム(UNAIDS)は、アフリカのHIV感染者は2000年までに900万人を超えるだろうと予告した。ところがいざ蓋を開けてみると、実際の数字は2500万人となった。アフリカの成人人口は世界の9%弱であるにもかかわらず、成人のHIV感染者に占める割合は3分の2を超えている。世界でもっとも感染率の高い国ボツワナでは、現在、成人の3人に1人が感染者である。感染者が次々と死亡しているため、ボツワナのような国では農民、教師、地域のリーダー、そして親までもいなくなって、社会の不安定化が進むだろう。
だがエイズの今後の動向は、アフリカではなく、世界人口のおよそ60%が住むアジアの状況によって大いに左右されるだろう。エイズはすでにアジアにかなり広まっているが、いつ、どこに最初に入ったのか、正確なことはわかっていない。だが1980年代半ばには、タイやインドなど数カ国に感染者が現れ始めていた。それから数年後には、もっとも「リスクの高い集団」として知られる2グループに属する人々―売春婦と麻薬注射常用者―のあいだで、HIV感染者が急増していることが明らかになった。感染者が増加するにつれて、エイズはアジアの麻薬取引のハイウエーを通って、ミャンマー(ビルマ)、ラオス、タイが国境を接するアヘン産出の「黄金の三角地帯」から、四方八方に広がり始めた。世界でもっとも人口密度の高い大陸で感染が始まったのである。
そのプロセスを見るといまや、爆発的な流行に何けた準備が整いつつあるように思われる。エイズが世界でもっとも人口の多い二国――インドと中国に達したのである。人口10億のインドと13億の中国は、世界人口の3分の1以上、アジアの人口のほぼ70%の人間を抱えている。これまでのところ、どちらにもまだサハラ以南アフリカを襲ったような急激な流行は起きていない。両国にはまだ流行を食い止める大きなチャンスがある。これらアジアの二大国は、そのチャンスをどう活かすのだろうか?
それは、私たちの時代のもっとも大きな社会的・倫理的問題の一つだ。インドの感染者は400万人
インドには推定400万人のHIV感染者がいると見られている。世界のどの国よりも大きい数である。だがインドは人口が多いので、国全体を平均した感染率は非常に低く、わずか0.4%と、アメリカの0.3%と大して変わらない。だがこの一見安堵させられるような平均値には、大きな地域差が隠れている。とくにインド最北東部のミャンマー国境付近と南部の州では、成人の感染率が2%以上に達している。これは全国平均の5倍であり、大流行を誘発するのに十分すぎる数値だ。
とくに感染率の高い地域のあいだでも、ウイルスの広まりかたにはまた別の差がある。インド南部では、エイズは性行為感染症(STD)という標準的なイメージに当てはまり、売春婦の感染率がとくに高い。インドではセックスは一大産業であり、デリーの非営利組織「児童労働問題センター(CentreofConcernforChildLabour)」によると、年間87億ドルの収入を生む。インド西岸最大の都市ムンバイは人口がニューヨークの2倍だが、売春婦の数はおよそ20倍である。そして1997年までに、これらの売春婦の70%余りがHIV陽性となった。彼女たちの客となる男性は、自分自身が感染する危険があるだけでなく、妻や他のセックスパートナーを危険に陥れ、ウイルスをリスクの高い集団から一般市民へと広める橋渡しをする。
インド社会の一部では、いまこの橋が非常に広くなっている。たとえば長距離トラックの運転手は通常家を長期間離れており、そのあいだに売春宿を訪れる者が多い。1999年に『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』誌に掲載されたある研究では、長距離トラック運転手6000名に面接調査しているが、既婚者の運転手の10人中9人までが「相手を選ばず関係をもつ」と答えており、セックスパートナーを見境なく頻繁に替えると述べている。インドの既婚女性のあいだにHIV感染者が増えているのも不思議はない。1993年から96年までの調査では、ボンベイ近くのプーナのSTDクリニックを訪れた女性患者の10%以上が、HIV陽性だった。この女性たちの90%余りは既婚者で、夫以外の男性と性交渉をもった経験はない(32ページの『増える女性感染者』参照)。
インド最北東部では、エイズはまったく別の性格をもっている。この地域は麻薬文化が蔓延しているが、黄金の三角地帯が近いことを考えれば、それも驚くにはあたらない。このあたりではエイズは静脈注射による麻薬の常用によって、とくに失業中の若い男性や学生のあいだに広がっている。麻薬常用者は汚染された注射針を共有することによって、血管にウイルスを打ち込んでいるのである。データはほとんどないが、政府の推定によると、インド国内には100万人のヘロイン常用者がおり、そのうちのおよそ10万人がこの北東部の比較的小さな州に住んでいる。
インド北東部のミャンマーと国境を接するマニプル州では、麻薬注射常用者とそのセックスパートナーのHIV感染率が、1988年のほぼゼロから4年後には70%余りに増えた。1999年には、産前診察を受けにマニプル州の診療所を訪れた妊婦の2.2%が、HIV陽性だった。産前ケアを受けにくる女性の感染のリスクが、一般住民のリスクをほぼ代表していると思われるので、疫学者は一般の動向を推定するために、しばしばこのグループを利用する。その点から考えると、南部と同じく、インド東北部でもHIVは社会の主流に入りこんできているようだ。

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