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Eco-Economy-Indicators

野生魚の漁獲量が限界
養殖の増加で野生魚の減少分を相殺

Janet Larsen

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 最新の入手可能なデータによると、世界の漁獲量は、数十年間にわたって増加したのち、2000年に9600万トンでピークに達し、2003年には9000万トンに減少した。1人当たりの漁獲量は、1980年代後半の平均17キログラムから2003年には14キログラムへと減少した。これは1965年以来で最低である。

 1980年代後半、漁船団は拡大し、魚群探知技術と漁獲技術はより効率的になり、世界の漁船は、ずっと深く遠い海域で操業し続けている。過去50年間で、海洋にいる大型捕食魚の個体数は、驚くべきことに9割も減少している。タラ、マグロ、ヒラメ、メルルーサといった多くの一般的な食用魚の漁獲量は、漁船のトン数や船隻数などから漁獲努力を3倍にしたにもかかわらず、半減している。国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の400万もの漁船は、全海洋漁場の4分の3で持続可能な漁獲量以上の魚を捕獲している。

 漁獲量の多い10種の魚が総漁獲量の3割を占める。そのうち7種が限界に達しており、完全漁獲、あるいは過剰漁獲と分類され、それらの漁獲量の増加は期待できない。これには、ペルーのカタクチイワシ2種、アラスカのスケソウダラ、日本のカタクチイワシ、北東大西洋のアオギス、北大西洋のカラフトシシャモ、大西洋ニシンが含まれる。他にも、マサバ、カツオ、タチウオは一部で過剰漁獲されている。

興味深いことに、これらの種のいくつかは、より好ましい魚資源が過剰漁獲されて初めて、漁獲対象となった。1990年代初めに、カナダのタラ漁業が崩壊したあと、アオギスの漁獲量が増加した。北西太平洋では、アラスカのスケソウダラと日本のイワシの過剰漁獲によって、漁師は日本のカタクチイワシや、タチウオ、イカに重点を置くようになった。食物網の下の魚へと漁業対象を下げ続けると、捕獲できるのは小魚やクラゲのみになってしまうと警告する科学者もいる。

より大型で成長した魚ばかりを捕獲すると、漁網から逃げ出せるほど小さい魚だけが残って繁殖することになり、やがて捕獲できる魚の平均的なサイズが小さくなる。その影響は、大型の捕食魚で顕著である。例えば、1950年代の平均的なヨシキリザメの重さは52キログラムであったが、1990年代には、平均で22キログラムになった。さらに、生殖能力が備わるのが遅い魚は、繁殖できるようになる前に捕獲されてしまうこともある。またいくつかの魚種では従来よりも早く生殖を始めて過剰漁獲に対応しているが、若い魚から生まれた稚魚は成長した魚からの稚魚よりも生存の可能性が低いため、個体数は依然として大きく減少したままであることが最近の研究で明らかになった。

漁師はたいてい、特定の魚種に漁業の重点を置いているが、しばしば対象ではない魚も捕獲している。総漁獲量の約8パーセントが廃棄されているか、死んだ状態あるいは死にかけの状態で海に戻されている。巨大な漁網で海底をさらい、繊細な生態系を破壊する、エビのトロール漁船は、もっとも無差別で、捕獲したうちの約62パーセントが海に戻されているのである。これには報告された混獲しか含んでおらず、漁具に巻き込まれた海洋哺乳類や鳥のことは全く入っていないため、本当の死亡数よりも少なく見積もられている。100キロメートルもの釣り糸に数千の釣り針をつけた延縄漁船によって、毎年大西洋で、約440万匹のサメ、ウミガメ、海鳥、カジキマグロ、そして海洋哺乳類が死亡していると推測されている。

世界中で、10億人が主要なタンパク源を魚に依存している。先進国の年間の1人当たり魚の消費量は29キログラムで、開発途上国の2倍以上である一方、野生の漁獲量の4分の3(重量ベース)は、途上国産である。途上国はまた養殖魚の9割を供給している。
 このように魚はもっとも広く貿易されている商品の1つである。毎年、海産収穫物の75パーセントが国際市場で取引されており、2002年は輸出額にして約580億ドルであった。日本、アメリカ、EUが最大の輸入国で、他国で捕獲された魚や、他国で養殖された魚を輸入している。また、高度な設備の漁船を途上国近くの海に送り、根こそぎ魚を捕獲する。例えばアフリカ大陸の西岸沖では、EUや日本の漁船が小さいボートを押しのけて魚を捕獲し、地元の人々のための魚はほとんど残っていない。

 皮肉なことに、海洋資源の破壊のために、各国政府は合計して毎年150億〜300億ドルもの助成金を支給している。2001年には、日本で漁業に支払われた助成金は、漁獲高の4分の1(魚価ベース)に相当する25億ドルに達した。アメリカの漁業助成金は12億ドルで、アメリカの漁獲高の30パーセント(同)を超えた。これらの助成金を廃止すれば、魚種資源にかかる圧力を大いに緩和できるであろう。

従来、漁業資源は魚種単位で管理されてきたが、いまや全生態系の管理の必要性を科学者たちは認識している。これには漁業活動が禁止されている海洋保護地の保存が含まれる。崩壊した漁場が回復できる保証はない。しかし、世界中の保護海域の調査で、保護されていない海域に比べて、保護海域やその周辺では、過剰漁獲された魚の個体数の回復が早まる種があったり、個々の魚がより大きく成長することが分かっている。世界の海の30パーセントを保護海域とする世界的なネットワークには、およそ130億ドルかかるであろうが、現在の過剰漁獲を推進する助成金よりは、はるかに低い額である。また、そのネットワークは、約100万の新たな雇用を生み、近海で捕獲できる魚の数を増加させるだろう。

持続可能な漁場をつくることは、厳しい漁獲割当と密漁を抑えるためのよりよい施策にもかかわっている。もっとも損害を与える、無差別の漁具を禁止し、混獲を減少させる新たな技術を導入することで、混獲を抑制できる。例えば、釣り針の形を変え、エサを違う種類に変更することで、北大西洋西部の漁船は、カメの混獲を92パーセント減らし、対象の魚種の捕獲を増やすことができた。また、オーストラリアのエビのトロール漁業者は、捕獲量を減らことなく、混獲を60パーセント以上削減する仕掛けを使用している。

水生生物の個体数や生態系の回復力を高めるこれらの対策は、気候変動や汚染などの迫りくる脅威から海を守るためのより広範な政策と同時に実施しなくてはならない。幼魚を成長させ生物多様性を育むサンゴ礁、昆布林、入り江は、特に脆弱である。海水温が平均よりわずか1℃上昇すると、サンゴ礁の多くは破壊され、サンゴ礁に頼っている魚や他の動物の減少につながる。地球温暖化は、すでに魚の生息地や分布、回遊パターンを変えている。

海洋の生態系は限界に達し、魚の需要は高まっているため、海水域あるいは内水面で養殖された魚は、世界の食用魚に占める割合を高めている。世界の養殖収穫量は、1950年の100万トン弱から2003年には4200万トンを記録し、もっとも急成長している食糧生産分野となった。養殖収穫量は、過去10年間にわたって毎年9パーセント増加し、野生の漁獲量の減少を相殺して、総漁業生産量は1人あたり21キログラムを維持している。

それでもなお、野生魚にかかる圧力を緩和するのは、水産養殖が慎重に行われた場合だけだろう。沿岸近くの養殖場の建設は、しばしば繊細な湿地を徹底的に破壊する。これらの養殖場はまた、疾病の発生源となり、有害な藻や低酸素海域を発生させる魚の排泄物が集まる。さらに悪いことに、養殖の肉食魚は、体重の数倍もの野生魚を食べ、それらの魚種資源にさらなる圧力をかけるだけである。現在、サケ、マス、エビ、そしてクルマエビは総養殖収穫量の9パーセントを占めるが、これら肉食魚の生産はおよそ8年毎に倍増しており、エサの原料になる野生魚資源に対する需要を急速に高めている。
 よりよい養殖方法として、陸上でコイのような草食魚の混合種を生産することなどがある。世界の養殖収穫量の約68パーセントを占める中国は、淡水池で効率のよいコイの混合飼養を開発した。また、アジアやアフリカの数ヶ国の養殖業者は、水田での魚の養殖に成功している。水田では、魚はわずかのエサだけで、追加のエサは必要なく、また、排泄物は作物の肥料となる。環境に優しい今後の水産養殖のひな型をつくることは、より持続可能な漁獲へ向けた重要な一歩となるだろう。

海か養殖場産かなど、食べる魚の環境影響を知らせることで、消費者が環境に配慮した食糧を選択して購入することが可能になる。独立した国際認証機関である海洋管理協議会(MSC)は、これまでに12の漁場を持続可能な管理がされていると認証し、また24カ国で263のMSCマーク(海の環境を保全しながら、持続的な海産物の利用を実現するという条件を満たした、魚や貝、エビ、カニなどの海産物製品に付けられるもの)が付けられた製品が購入できる。さらに、モントレー水族館や米国オーデュボン協会など多数の機関が、一般市民や料理店主にさまざまな食用魚の情報を提供している。

注意深く管理しなければ、かつては無限であると考えられていた世界の魚資源の限界をつきつけられることになるだろう。世界の漁場と適切な水産養殖を維持することは、現代の漁師と消費者だけでなく、次世代の人々にとっても最大の利益となる。

関連環境用語(EICネット環境用語集)

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