都市環境において、人間の排泄物や産業廃棄物を流すために一回限りで水を使い捨てる方法は、新技術が開発され、水不足が広がる中、今の時代にふさわしくない過去の行為となりつつある。水は都市に入り、人間の排泄物や産業廃棄物で汚染され、都市の汚染を深刻化させる。河川や湖、井戸に流出した有害産業廃棄物は、帯水層にまで浸透し、地表水及び地下水がともに飲料水として安全でなくなる。さらに、有害廃棄物は、地元の漁場をはじめとする海洋の生態系を破壊している。廃棄物を地域の自然環境に放出することなく管理し、水が恒久的にリサイクルされるしくみをつくり、都市と産業における水の需要を大幅に削減すべき時なのだ。
人間の排泄物処理に対する現在のエンジニアリング的概念は、排泄物を流すために大量の水を利用し、下水道に送り込み、地域の河川に放出される前に処理するというものである。このような「水は使い捨て」システムは、高いコストを必要とし、大量の水を消費し、養分循環を壊し、さらには発展途上国で発生する病気の大きな原因となっている。
水不足が拡大する中、水使用を前提とした下水道システムを持続することは困難となるであろう。水使用を前提とする下水道に土壌でつくられる養分が流出し、通常その養分は、河川、湖、海に放出される。その結果、農業に必要な養分が奪われるだけでなく、養分過多により多くの河川が死滅し、海洋沿岸地域で200近いデッドゾーンといわれる酸欠海域が形成されている。未処理の汚水を河川に放出する下水システムが、病気や死亡の主な原因ともなっている。
インドの科学環境センター所長スニタ・ナライン氏は、下水処理施設での水使用を前提とした処理システムは、環境的にも、経済的にもインドで持続不可能であると断言する。インドで5人家族が1年に250リットルの大便を出し、水洗トイレを利用すると、その排泄物を流すために15万リットルの水が必要になるとナライン所長は指摘するのだ。
(続き)【水資源】「水は使い捨て」の時代は終わった
-水と公衆衛生(インド)-
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