|
 「地球白書2007-08：都市の未来」日本語版が今月発売された。2008年には世界で2人に1人が都市に住み、6人に1人がスラムに住むという。また、『都市』こそが貧困や気候変動、地球温暖化といった問題の『鍵』になるという。
ワールドウォッチ研究所が発表した「地球白書2007：都市の未来」は、世界各地の開発の優先事項を見直し、深刻な都市の貧困問題を解決しなければ、今から2030年までに世界で増えると予想される11億人のうち半数を超える人々が基本的サービスの行き届かないスラムで暮すことになると警告している。さらに、「地球白書」は、都市面積は地球全体の0.4％に過ぎないが、二酸化炭素の大半を排出しており、危機的な気候変動問題の緩和への鍵は都市にあると指摘しているのだ。
わずか100年前は、世界人口の大半が農村に住んでいた。しかし2008年には世界人口の半分以上が都市で暮すことになる。世界の都市や郊外は拡大を続け、その中で暮す人の数が毎年約6,000万人の規模で増えている。フランスの人口にほぼ等しい数だ。そのほとんどが開発途上国の低所得居住区で暮らす都市住民だ。
無計画、無秩序な都市化は人々の健康や地球環境に計り知れない悪影響を与え、多くの国が社会的、環境上、経済的に不安定な状態に陥っている。30億人といわれる都市住民のうち10億人がスラムで暮す。「スラム」とは、清潔な水の利用、家の近くのトイレ設備、耐久性のある家屋といった、生きていく上で不可欠な条件が確保されていない場所のことだ。清潔な水を利用できない、その結果極悪な衛生環境を強いられ約160万人―20秒に1人―の都市住民が毎年命を奪われている。
「スラムに住む子供たちにとって病気と暴力は日々の脅威である。教育や医療を受けることなど夢のまた夢なのだ。政治家は、教育、医療、インフラ整備への投資を増やし‘貧困の都市化’に対応しなければならない。」と「地球白書2007」のプロジェクト責任者モリー・オマーラ・シーアン氏は訴える。1970年から2000年にかけて都市への開発援助額は約600億ドルで、開発援助総額1兆5､000億ドルの4%にすぎないのだ。
アフリカ大陸では世界で最も急速に都市化が進んでいるため、アフリカ委員会は、都市化がHIVエイズ問題に次いでアフリカが直面する最も深刻な問題であると結論づけた。現在アフリカ人口のうち都市人口は約35%だが、2030年までには50%に達すると予想されている。「地球白書2007」の前書きで国連人間居住計画事務所のアンナ・ティバイジュカ事務局長は、「国家独立による期待感は薄れ、人々は都市に住む厳しい現実を目の当たりにしている。都市の将来を見据えて準備してこなかったからだ。」と嘆いている。
また、「地球白書2007」では、地域団体や地方自治体がパイオニア的役割を果たし、率先して貧困や環境問題解決のための画期的な政策を打ち出し、時には中央政府にまさる政策を講じていると指摘している。ワールドウォッチ研究所のクリストファー・フレイヴィン所長は、「世界の都市を救うといっても無理だと思うかもしれない。しかし、すでにその取組みは始まっている。食糧からエネルギーに至るまで自らの手で都市の中で作り出していこうとする先駆者的な人々がふえているのだ。」と、述べている。
後編へ続く
・【地球環境問題の書籍をオンラインで購入(ad)】
|
/ 
