インドで行われている太陽光発電のパイロットプロジェクトが、貧困農村地帯に暮らす10万人の生活を一変させた。プロジェクトは国連環境計画(UNEP)の主導によるもので、太陽光発電システムを設置する家庭への資金融資を促進するために150万ドルが投じられた。同国での成功を受け、アルジェリア、中国、エジプト、ガーナ、インドネシア、メキシコでは付随する同様なプログラムが実施された。
インドでは人口の約45%が送配電網に接続しているものの、停電が日常的に発生する。電力網に接続していない人々は、高い灯油を数リットル買うために遠くまで歩かなければならない。途上国では、屋内の照明に灯油などの「有害な」化石燃料を使用することが、室内空気汚染による5歳未満の子どもの「死亡の64%」「生涯にわたる障害の81%」を引き起こす原因となっている。「貧困層が照明に使っている灯油は、高価で手が届かない、入手不可能、危険・有害という問題があるが、電力網も信頼できない」と国連基金のティモシー・E・ワース総裁は説明する。
発展途上国における太陽光発電の最大の障害は、貧しい地域の資金不足だ。UNEPの家庭用ソーラーシステム・プロジェクトは、2〜4個の低ワット小型蛍光ランプと直流ファン1台の電力をまかなえるソーラーシステムに少額融資(300〜500ドル)をするよう銀行に促し、太陽光発電を利用しやすくすることを目的としている。インドの2大銀行であるカナラ銀行とシンジケート銀行は、当初からプロジェクトに携わっており、農村部の両行合計2000支店で5年返済の低利融資を共同で行ってている。ソーラーシステムの業者については、審査の結果、融資にふさわしい競争力のある製品を幅広く取り扱っている5業者が選ばれた。
そのかいあって、インド南部カルナタカ州のプロジェクト実施モデル地区では、融資を受けた家庭用ソーラーシステムの数が2003年の1400から現在は1万8000以上に増え、約10万人に電力を供給している。このシステムは、一般家庭や店舗に電力を数時間連続して供給するため、小さな家電製品を動かしたり、より明るい読書灯を点けたりできるようになった。国連は「太陽光発電を利用した照明によって、子どもたちの学校の成績が良くなり、裁縫などの家内での仕事の生産性が向上し、果物の屋台でも、灯油ランプから出る煙で商品が売り物にならなくなるということがなくなり、売上が伸びたと考えられる」としている。
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