上院エネルギー委員会での、ジェームズ・E・ハンセン博士の気候変動に関する歴史的な証言から20周年を迎えるにあたっての声明
ワシントンDC発―アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェームズ・E・ハンセン博士が、1988年6月23日にアメリカ議会で初めて証言してからちょうど20年が過ぎた。当時、ハンセン博士は、地球の気温が自然変動を超えて上昇していると述べた。断固とした行動をとらずに、これから先さらに20年間を過ごすことは許されない。
1988年以降、ハンセン博士が公表したように、私たちの気候が人間活動による悪影響を受けているという考えは、科学的思考として主流になった。この人間活動とは、主に化石燃料の燃焼のことで、今後数十年間の気候変動の予測はますます深刻になっている。
しかし、政治的な行動は、科学の進歩の速さから大きく遅れをとっている。さらに、ますます多くの市民が温室効果ガス排出量の規制を支持しているにも関わらず、アメリカ上院は、今月初めに、この規制を開始させるはずだった重要な法律を承認しなかった。
ハンセン博士の最新の研究によると、温室効果ガスの濃度はすでに、破壊を及ぼすレベルに達しており、気候は危険な「転換点」に近づきつつあるという。この「転換点」に到達すると、大気と海洋に大規模な変化をもたらし、復帰には何千年もかかるかもしれない。ハンセン博士は、最新の論文で、二酸化炭素排出量をほぼ即座に大幅削減するように呼びかけており、2030年までに規制されていない石炭の燃焼を段階的に廃止することに重点が置かれている。
世界が2009年の新しい気候変動枠組み条約に向けて進むなか、政策決定者たちは、私たちが直面している多大なリスクと今後求められる行動の緊急性を理解しなければならない。
そうした低炭素エネルギーシステムへの移行は、膨大な費用がかかり困難だと主張する声は依然として多いが、私たちの研究によると、この移行により多くの経済機会がもたらされ、革新と雇用創出が促され、貧困の緩和とエネルギー安全保障の向上につながる。
低炭素経済への移行は、風力、太陽、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギー源の持続可能な利用と、エネルギー効率の大幅な向上に基づくべきである。世界は、再生可能エネルギー源が化石エネルギーよりも安価になる「転換点」に到達することができる。そうすれば、経済の勢いがこの移行を加速化するだろう。
アメリカなどの工業国は、途上国が気候変動のもたらす問題に対応する能力を高め、より実行可能なエネルギー開発の道を歩むように、途上国と協力しなければならない。ブラジル、中国、ヨーロッパ、インド、アメリカは、世界全体の温室効果ガス排出量の60%を占めている。
政策担当者たちは、ハンセン博士の推奨事項に従い、二酸化炭素排出量に価格をつける政策を導入し、制御されていない石炭火力発電所の建設を廃止し、大量の炭素を隔離する農業と林業の手法を推進するべきである。
必要とされているエネルギーの移行を実現するためには、政府政策の抜本的な修正、新しい気候変動枠組み条約という地球規模のガヴァナンスの強化、多くの新技術の開発及び導入に向けた民間部門の動員が必要になるだろう。
ワールドウォッチ研究所のクリストファー・フレイヴィン所長は、「私たちは、この重要な問題でのジム・ハンセンのリーダーシップを称賛する。ハンセンの警告は、2008年を気候政策での転換点として、気候科学が世界で切実に必要とされているポスト化石燃料の経済を打ち出すことの重要性を示している」と述べた。
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