現在、アメリカの葬儀業界の規模は250億ドル、年間180万の埋葬を行っており、費用は平均およそ6000ドルである。2040年までに団塊の世代の数百万人が死亡すると予測されており、市場は拡大する一方である。
葬式の方法は、文化や生活様式により世界中で大きく異なる。インドのボンベイ(現ムンバイ)のパーシ(ゾロアスター教徒)社会では、遺体の処理にハゲワシを使うという、数世紀続いた伝統に従っている。一方、アメリカでは、故人の好きなスポーツチームのロゴを入れた特別な骨壷を購入することができる。また、ライフジェムという会社は、遺体の炭素から高品質の鑑定書付きダイアモンドを作り出す計画である。
アメリカの数都市では、市民が新しい火葬場の建設計画に反対し、批評家たちは火葬場により厳しい排ガス規制を要求している。排ガスを減少させるその他の案には、火葬の前に遺体から水銀の歯の詰め物を取り除いたり、液体窒素を使用して遺体を粉々にするといったものがある。オーストラリアのアデレードにあるセンテニアル公園墓地では、そこから出る二酸化炭素を相殺するために植樹をしている。
死はまた、環境保護の手段にもなりつつある。イギリスには、約180の自然墓地と森林墓地があり、全埋葬の10%以上を占めている。カリフォルニア州のファーンウッド共同墓地は、数少ないアメリカの自然墓地の1つであるが、野草の広がる地やアメリカスギ林での環境にやさしい埋葬を行っている。ジョージア州のエターナル・リーフス社は、遺灰を人工サンゴ礁に組み入れて、魚の生息場所を復元させる計画である。
現代の葬式は、資源集約的である。遺体は通常、有害なホルムアルデヒドで防腐処置を施され、不浸透性で(多くの場合生育に時間がかかる硬材で作られた)合板の棺桶に密閉され、その後、仕切られた墓所やセメントの埋葬室に納棺される。
埋葬に要する土地が少ないため、火葬はより環境にやさしい選択肢であると考えられるが、環境に影響がないわけではない。1975年から2004年の間に、アメリカ人の火葬の割合は6%から31%に増加した。アメリカ国内には、現在1800以上の火葬場があるが、毎年約200箇所が新たに建設されている。火葬場は主として化石燃料から得られたエネルギーを必要とし、焼却過程で二酸化炭素と水銀(1体あたり最大6g)を排出する。米環境保護局は、火葬場からの水銀排出量(主に歯の詰め物)は毎年145kgと推定しているが、活動家たちは、実際の数字は3トンにのぼるとしている。
しかし、全体的に見れば火葬はより環境に優しいかもしれない。オーストラリアの研究によると、火葬は平均で160kgの二酸化炭素を排出するが、それに対し標準的な埋葬は39kgである。しかし、墓地の維持費(大量の殺虫剤、水、草刈)を含めると、埋葬は火葬より二酸化炭素を10%多く排出することになるのである。
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