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1984年創刊、世界で読まれている地球環境問題のロングセラー本『地球白書』、最新版発売!

WorldWatch News

金融崩壊か、グローバル・グリーン・ディールか?
世界金融危機が、持続可能性に向けた改革のチャンスに

 

 

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  いまだ収束の様相を見せない世界的な金融危機の影響は、ウォール街の大手金融機関や中小企業にとどまらない。金融市場や経済相の言動を注視してみると、わずか数か月前には「歴史的」な「急務」といわれていた問題が、政治的指導者のレーダースクリーンからすっと消え去ってしまったようだ。当時は、気候変動は「地球規模の緊急事態」としきりに語られ、現在の種の絶滅は「6500万年前以来の大量絶滅」だと説明され、かつてないほど豊かな世界に今なお数十億もの人々が1日2ドルで生活していることは「世界的な不祥事」にほかならないといわれていた。それが一転して、世界的な金融不安が、環境対策や貧困解消運動に対する資金供給をスズメの涙ほどに縮小してしまいそうなのである。
  経済危機が収まるまで、緊急のニーズを暫時、脇に置いておくような余裕は、われわれにはない。今日の経済、環境、社会には激しい破壊の嵐が吹き荒れており、これには確固たる多面的な対応が必要である。実のところ、オバマ米次期大統領〔執筆時〕も含め、世界の政治的指導者たちに求められるのは、ただ世界経済をよみがえらせることだけではない。経済を立て直す過程で、雇用を創出すると同時に気候を安定化させ、食料生産を増大させながらも水と農薬の使用量を減少させ、国民総所得を増大させながらも、その分配の平等化を促進しなければならないのである。これに成功する政治的指導者とは、今日の多岐にわたる問題間の相互作用を十分に理解したうえで、その相互作用を十分に活かして、企業や労働者や地域社会組織の間で強力な世界連合を築くことに優れた人々だろう。
  このような広範にわたるアプローチには、アメリカの1930年代のニューディール政策を思い起こさせるような、しかし範囲やビジョンのスケールはいっそう壮大な基本構想が必要となるだろう。国連環境計画(UNEP)から市民団体「グリーン・フォー・オール(みんなに緑を)」まで、さまざまな組織が議論しているように、地球社会では、世界経済を改革に向けて奮い起たせるような取り組みが求められている。この取り組みによって、地球の「資源の再生能力や廃棄物の吸収能力」の範囲内で、人類の大半に益する、つまりは「人類の公益」に貢献する経済に改革していくのである。このような歴史的瞬間を実現するには、「生産性は異常に高いが、病んでいる」現在の経済をただ修復するのではなく、人口密度が高く環境負荷が大きいという世界の現実に適合するような新たなアプローチも必要とされる。つまり、着目点を「成長とよばれる拡大」から「真の発展」へと転換し、大量消費文化で物財をあふれさせるのではなく、あらゆる人々の真のニーズが満たされるようにする「グローバル・グリーン・ディール」が求められているのである。

 さて、そのグローバル・グリーン・ディールは、次のような戦略目標を持つことになろう。
*再生可能なエネルギー経済に移行すること
  再生可能なエネルギー源を、世界のエネルギーシステムの主要な1次エネルギー源と位置づけ、脱化石燃料への仕組みを整える。風力や太陽光および太陽燃を1次エネルギー源とする発電は、石油や石炭や原子力よりも環境への影響が小さいだけでなく、多くの雇用を創出できる。こうした新たなエネルギー産業により、世界ですでに200万人以上の雇用が生まれており、今後も急拡大が続けば、この数字は数年のうちに数倍にも増えていくことだろう。
*革命的な効率高度化を立ち上げること
  より少ない資源で、より多くを生産することは、もっとも確実に人類の富を生み出す方法の一つである。環境活動家たちは、エネルギー効率や非エネルギー資源効率を改善するアイデアを無数に持っている。実のところヨーロッパでは、諸資源の利用効率を10倍にすることが可能だとする分析も出ているのである〔ファクター10:2050年までに先進国の国民1人あたりの資源消費量を1/10に減らす資源効率改善〕。運輸部門、住宅部門、製造業、公益事業では、大幅な効率化の機が熟している。経済活動の「非物質化」が進めば、必要な鉱物や木材が大幅に減るため、鉱業や林業がもたらす環境負荷が激減するだろう。
*グリーン・インフラに投資すること
  送電線網に革命を起こし、車ばかりに頼らずに鉄道をはじめとする大量輸送手段を取り入れた輸送システムを構築し、また住宅地は郊外に広げずにコンパクトにまとめる。そうすれば、経済活動が刺激され、膨大な雇用が創出され、われわれはエネルギーや物質の不必要な大量消費から解き放たれることだろう。
*物質を循環させること
  経済活動の入り口ともいえる原材料確保段階(採鉱、木材伐採、石油掘削、漁業などの採取活動)は、製造段階や保守業務に比べて必要とする労働力が少ない一方で、多くの公害を生み出すことを、製品寿命研究所のウォルター・スタヘルが指摘している。循環型経済では、耐久性や補修性、リサイクル、再製品化が重要視され、一定の資源基盤からより多くの価値を絞り出すように生み、より多くの雇用を創出する。各企業は、売上を最大化しようとするだけではなく、顧客が製品から最大限の機能性とサービスを得られることを収益源とみなすであろう。
*国内および国家間で公平な富の分配を行うこと
  国際労働機関(ILO)によると、データが入手できる国の2/3において、1990年から2005年の間に、賃金所得者の上位10%と下位10%の間で所得の格差が拡大していたという。経営者と労働者の間の賃金格差は、かつてないほど広がった。S&P500株価指数〔スタンダード&プアーズ社が500銘柄の株価から算出する指数〕の500社に入っているアメリカ大手企業の最高経営責任者(CEO)は、2007年の平均賃金が1050万ドルであり、これは同国の労働者の平均賃金の344倍にあたる(そして、アメリカのヘッジファンドや未公開企業などに投資するプライベート・エクイティ・ファンドのマネージャー上位50人は1人平均5億8800万ドルを得ており、同国労働者平均の約1万9000倍を手にしている)。わずか30年前には、CEOの賃金は、労働者平均賃金の30?40倍にすぎなかった。

 これらの目標を実現するには、的確な規制、税制改革、補助金改革、法律や政令による義務づけ、奨励策、環境に配慮した産業政策が必要となろう。その大きな第一歩は、政府の施策により「環境面の真実を告げる」価格設定〔環境コストの内部化〕が行われるようにすることである。つまり、再生可能エネルギー源と比べて化石燃料ばかりがこれまで享受してきた「ただもうけ」に終止符を打ち、化石燃料の燃焼につきものの大気汚染や水質汚染、健康への悪影響、気候変動のリスクが、エネルギー価格に完全に反映されるようにするのである。
  炭素税や類似の施策を導入すれば、この目標が達成できる。政府は、この税収を財源として、給与支払い税〔支払い給料総額への課税であり、雇用の抑制要因になっている〕の形で労働者にのしかかっている税負担を軽減できる。このような環境税制改革は、これまでヨーロッパで限定的に行われており、雇用の創出につながるであろう。その他の施策としては、エネルギー集約度や物質集約度を低減した企業や、リサイクル、再使用、再製品化の活動を強化した企業に対して、税制優遇措置を行うことも考えられる。さらに、このような事業展開によって削減されたコストを基に新たな雇用を創出した企業に対しては、税額控除を倍増させることもできよう。
  二つめのアイデアは、政府の調達能力を使って、環境保全技術と雇用創出のための大規模な市場を生み出すことである。これにより、しばしば革新的な手法に立ちはだかる参入障壁を取り払い、ニワトリが先か卵が先かの議論を乗り越えるのである。世界中の地方自治体から中央政府まで合わせると、公共調達には毎年数兆ドルもの予算が使われている。消費財の環境ラベル制度や情報キャンペーンを広範に行うとともに、的確な調達を行うことによって、エコ商品にスケールメリットをもたらし、価格競争力の強化という点において重要な役割を果たせる。
  三つめのアイデアは、公共事業である。公共事業は、少なくとも一時的には、都市部と農村部の双方で役立つ可能性がある。農村部では、植林事業、土壌浸食防止事業、さらに気候変動への適応事業が検討対象になるであろう。これらの事業を有機農業や農地区画整理の推進とともに行えば、より自律的回復力のある農村経済の構築に役立つ。一方、都市部では、緑地帯の設置、公園などの緑地の再生、インフラの近代化、歩道や自転車専用レーンの新設および整備拡幅などに重点的に取り組むことができよう。
  四つめのアイデアは、既存の建築物の改修で、冷暖房エネルギーを大幅に削減するとともに、世界中で約1億1100万人が働く建設業を活性化できるだろう。ドイツには、アパートに耐候性〔風雨、降雪などへの耐性〕を強化するための政府投資と民間投資により、5年にわたって14万人の雇用が維持または創出されたという先例がある。しかし、グローバル・グリーン・ディールは、世界の中流階級の住宅問題をはるかに超える施策となるだろう。環境対策と、世界各地のスラムに取り残された人々に一定水準の住居を提供する取り組みとを、組み合わせるのである。

 また、自動車産業で環境配慮を進める戦略的投資を行うことも、大きな経済効果および環境効果をもたらすだろう。ガソリンを大量に消費するスポーツ用多目的車(SUV)の量産に力を入れてきたアメリカのゼネラルモーターズ(GM)など一部の大手自動車メーカーは、今や社の生き残りをかけた土俵ぎわにある。政府は、この産業に資金を注入するにあたり、燃料効率の高い車の研究開発と商品化に全力を傾注させることを条件にすることができよう。さらに、フィーベイト〔feebates:環境負荷の大きい燃料効率の低い車の自動車取得税の増額fees(課税)と燃料効率の高い車へのrebate(戻し税・補助金)の組み合わせ〕によって、新型モデルに低燃費の実現を義務づけることもできる。通常、買い換えまでの期間が長いことや既存の高燃費車の潜在的燃料消費の膨大な量を、勘案するならば、政府は上のような努力とともに高燃費車を買い上げる施策を実施することも考えられるだろう。
  だが運輸政策では、自動車産業を超えた視点から、都市間鉄道や都市内の大量輸送機関ネットワークを大々的に復活させる取り組みが必要とされている。このようなシステムやそのインフラを拡大し近代化すれば、車と飛行機を中心にした交通システムとは違うアプローチが生まれる。革新を促し、大気汚染を減らし、製造業において給与水準のよい職を大量に生み出すことになろう。

 最後に、金融業界を救済するにあたっては、この機会を生かして、借金まみれの膨大な数の衝動的消費者の温床となっていた金融部門を、環境配慮型の開発事業の推進役へと転換させるべきである。つまり、持続可能な業態への融資を優先して、効率の高い機器の導入時に必要とされる多額の先行投資という障害の打開を図るのである。環境配慮型経済では、住宅の耐候性を高めたり、ソーラーパネルを設置したり、耐久性が高く効率の良い商品を購入したりといった、環境面での恩恵が見込まれる経済活動に対しては、有利な支払条件が提示されるようになるだろう。アメリカでは複数の都市で「立地効率ローン」と呼ばれる住宅ローンが用意されている。簡単にいうと、徒歩や公共交通機関で生活できる地域では、有利なローンが利用できるのである。このような制度が広く導入されれば、車依存社会の根源にあるスプロール現象に対抗できる。

 さて、その資金源はどこにあるのか?
  現在の危機の源は、メリーランド大学のハーマン・ディリ教授の述べているように、「実物資産の増大に対して、金融資産が増大しすぎていること」に見出せる。それにもかかわらず、世界的な信用収縮は何ら違法性のない企業や家計まで脅かすおそれがあり、大量の失業者を生み出しかねない。このことから、次の重要な問いが生まれる?「グローバル・グリーン・ディールの取り組みに必要な資金は調達可能なのだろうか?」
  世界的に景気が後退しているとはいえ、おそらく「可能」と答えられるだろう。アメリカ政府による金融安定化のための救済資金7000億ドルに、ほかの国々の示す多額の資金を合わせると、各国政府は非常事態に相当額の資金を調達できることが分かる。正しい景気対策を打ち出せば、巨額の資本がいくらでもグリーン・ニューディールの資金源として注ぎ込まれるだろう。アイデアをいくつか挙げよう。
*軍事費
  ストックホルム国際平和研究所によると、2007年の世界の軍事費は1兆3000億ドルと記録的な額にのぼったという。実質ベースで、10年前の45%増である。アメリカだけで、国防総省の維持費とイラクおよびアフガニスタンの戦争に年間約7000億ドルを費やしている。大国間の争いのない現代世界では、このような予算の相当部分をグローバル・グリーン・ディールに使う方が好ましいだろう。
*政府系ファンド
  石油が豊富に産出され巨額の貿易黒字を持つ国や政府が、2008年に手にした富は2兆?3兆ドルにのぼる。このような資本を得た政府がグローバル・グリーン・ディールへの投資をするような誘導をすべきではないだろうか。
*トービン税
  2007年の世界の為替取引額は、1日当たり3兆7000億ドルに及んだ。グリーン・ディールの財源として、トービン税を導入してはどうだろうか。この名称は、最初に提唱した経済学者ジェームズ・トービンの名に由来している。外国為替取引にほんのわずかな税を課すだけでも、税収は数十億ドルにも数百億ドルにもなるとともに、金融市場を不安定化させる通貨投機を抑制することにもなろう。
*化石燃料補助金
  毎年1500億?2500億ドルにのぼると推定されている。石油会社は収益性が高く、その製品は気候を不安定にする。この政府補助金を廃止して、その資金をグローバル・グリーン・ディールに回してはどうだろうか。「棚からぼたもち」〔超過利潤、あるいは意外の利潤とよばれる〕の石油収益に対する課税や、炭素税、炭素排出枠のオークション収入も、グローバル・グリーン・ディールに回すことにすれば、それぞれ「資金調達」と「気候変動防止」という2つの目的を同時にかなえることになろう。
*保険業界
  異常気象による自然災害の損害額が増え続けており、これは保険業界に対する「強度の脅威」ととらえられている。1980年から2004年の間に、このような災害による損害は計1兆4000億ドルにのぼり、うち3400億ドルが保険でカバーされた。保険業界は、グローバル・グリーン・ディールのなかでも、特に気候の安定化に貢献しようという強い動機を持っているかもしれない。
*国 債
  国債はさまざまな目的のために広く発行されており、環境投資のために使うこともできよう。たとえば、中国政府は2006年以降、数百もの省エネ事業を実施するため、財源の一部に国債を当てている。

 グローバル・グリーン・ディールを進めるというのは、一人の指導者によって成せることではないし、数か国の政府が集まったとしても無理だろう。少なくとも第二次世界大戦後に行われたぐらい大規模に、グローバル・ガバナンスの再建を行わなければならないであろう。すなわち、国際連合が設立され、さらに国際通貨基金(IMF)や世界銀行を中心とするブレトン・ウッズ体制が確立され、世界的に安定した新時代が築かれたが、そのような大改革が必要なのである。
  現在、京都議定書に続く協定を定め、ポスト炭素経済を構築するために、新たな国際政策の立案が必要とされている。このなかには、IMFや世界銀行が環境に配慮した衡平な開発を促すような新たな指針や、環境技術開発で協力し合ったり持続可能性に関する最優良事例を共有したりするための革新的な取り決めなどが含まれる。
  2009年1月にドイツのボンで開かれる会議では、「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」が新設されることになる〔2009年1月26日の会議にて設立文書への署名が済み、最終的には25か国の批准を受けて発足の見込み〕。IRENAは、世界中で再生可能エネルギーを大規模に導入する主要な推進機関になるであろう。省エネの国際協力を促す別の組織とともに、このIRENAは、グリーン・ディールにおけるグローバル・ガバナンスの中核になり得る。

 大きな課題と厳しい制約のあるこの世界において、これはまちがいなく難題である。しかし人類は、安寧の時代ではなく、危機の時代にこそ、新たな挑戦に立ち向かうのが常である。現在の状況には、わずかなチャンスもあるだろう。過去にしばられぬ発想で、人口のひしめくこの世界において、より公正で環境に配慮した文明を創造するチャンスである。さあ、取りかかろうではないか。

ゲーリー・ガードナー(Gary Gardner)
マイケル・レナー(Michael Renner)

* 共に、ワールドウォッチ研究所の上級研究員。

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※ワールドウォッチマガジンは米ワールドウォッチ研究所が隔月で発行している。詳細

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