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WorldWatch News

気候変動がもたらす「新たな紛争の時代」 (Vol.23,No.1)

 

 

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世界中のすべての国、とくに最も脆弱な国やコミュニティは「資源をめぐる摩擦の激化」、「深刻な環境破壊」、「感染症の再流行」、「貧富の格差拡大」、「とどまらぬ人口増加」、「失業および生活不安」といった問題が重なり、その脆弱性は増すばかりだ。これら問題の多くが気候変動によって悪化することは、まちがいない。干ばつや洪水や暴風雨は強度も頻度もともに増し、作物の収穫に壊滅的被害を与え、食料生産は激減して食料安全保障(フード・セキュリティ)は脅威にさらされるだろう。「極端な気象現象」、「海面上昇」、「病原媒介動物の生息域の拡大」といったことにより、一部地域では長期にわたって、健康さらには生命までもが危険にさらされるようになり、そこに住み続けられなくなることも想定される。また、経済が停滞、あるいは後退し、その結果として社会全体に不満が募り、そうした人々を排除する目的で大規模な強制的移住が断行され、国家および国際制度に深刻な問題を突き付けることにもなる。「資源確保」、「自然災害の影響」、「難民および移住者の流入」をめぐり、紛争の火ダネがくすぶっている。
         
 水、耕地、森林といった自然資源の枯渇や減少が進めば、それらの確保や分配をめぐって、紛争に至ることもありうる。最も水不足が深刻な地域として、北アフリカ一帯、中東、中央および南アジア、中国の一部地域、オーストラリア南東部、アフリカ南部、ラテンアメリカ南西部、アメリカ西部の一部地域があげられる。人口増加という要因だけでも、水不足に直面する人の数は増える。今後どのような気候シナリオをたどるかにもよるが、2050年までには、さらに6000万〜10億の人々が水不足の影響を受けると予測される(また、現在すでに水不足に悩む7億〜28億人は、さらに深刻な状況に直面するだろう)。
 気候変動が食料生産に与える影響、つまり「水資源量の減少」、「気温上昇」、「深刻化する干ばつ」などは地域によって大きな差異があり、降水量や積算温度が好転して恩恵を得る地域も出てくるかもしれない。しかし、ワシントン大学とスタンフォード大学の科学者による研究では、今世紀末までに世界人口の半分が深刻な食料不足に直面すると予測されている。熱帯・亜熱帯地域では、気温上昇の影響だけでも、コメやトウモロコシなど主食の収量が20%〜40%も落ち込むという。また干ばつのリスクが高まれば、収量のさらなる減少は避けられないだろう。
 資源をめぐる争奪戦の予兆ともいえる現象が、すでに起きている。豊かだが食料不安をかかえる国々(サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦、中国、韓国など)、そして民間投資家が、アフリカやアジアの貧しい国々を中心とする海外の土地を広域にわたり買収または借り上げて、輸出に振り向ける作物を生産しているのだ。面積でおよそ1500万〜2000万ヘクタールという規模も含む農地取引契約が少なくとも180件締結され、「土地収奪」とよばれている。このような農地取引は、輸出依存型のモノカルチャー(単一作物を連作する)を推進するため、貧しい国を食い物にし、貧しい国の食料安全保障を脅かし、最終的には「受入国」における政治的安定を損なうのではないかとの不安が高まっている。
 アフリカのサヘル地域[サハラ砂漠南縁の半乾燥地]の干ばつや砂漠化が深刻になるなか、農民や遊牧民の間の衝突が激しさを増し、利害をめぐる対立は深まるばかりだ。武器の流入により、このような衝突で命を失う者が増えるというケースも目立つ。なかでも、スーダンのダルフール地域の状況は最も深刻である。地域の反政府活動鎮圧を狙いとした冷血な戦略のもと、スーダン政府は、意図的に民族間の敵意を煽ってきた。つまりダルフールの例は、資源や環境という要因が単独ではなく、政治力学と相互に作用することで、紛争が最悪の状況に陥るということを示している。
 2008年には約4200万人が、戦争や迫害から逃れ、正式に難民または国内避難民(IDP)と認定された。国際法で規定される狭義の認定理由に加え、別の場所への避難を決意するには、他にもさまざまな理由がある。自然災害により約2500万人が住居を追われたと推定される。さらに、1億500万人が「ダム」、「鉱山」、「道路」、「工場」、「大規模農園(プランテーション)」、「野生生物保護区」など、各種のいわゆる開発プロジェクト(大規模な環境破壊をもたらす場合も多い)により住む家を失っていると、ロンドンのNGOクリスチャン・エイドは分析する。
 環境難民や環境移民に対して、「土地、水資源、雇用、公共サービスを奪い合う招かれざる競争相手」という、警戒や敵意の目が向けられることもある。たとえば、インド北東部の貧しい州では、バングラデシュからの移民が暴力行為の被害を受けている。アフリカ北部の各都市には、(最終目的地として、または欧州に向かう立ち寄り先として)サヘル地域からの移民が集中しているが、移民の大規模な流入が社会不安、さらには移民への攻撃につながっているケースもある。
          
 アメリカ海軍が財政支援する海軍分析センターが委託し、頻繁に引用される『2007年レポート』でも言及されているように、気候変動が、「世界で最も不安定な地域の一部において、安全保障上の脅威を増幅させる要因」と指摘されることも多い。同レポートには、気候変動にともない軍事活動や軍備強化がより困難になる、また気候が不安定化した国で混乱が生じ、西側諸国が石油や鉱物資源を確保することがより困難になるとの懸念が示されている。その結果、気候崩壊の時代に見合った安全保障政策を抜本的に見直すのではなく、環境や人道上の問題を軍事力で解決するという方向に進みかねない。2009年8月のニューヨーク・タイムズ紙の一面には、「気候変動は、暴風雨、干ばつ、大量移民、流行病の影響に対処するため、軍事介入の可能性を提起している」と論ずる記事が掲載された。アメリカ軍部や情報局の見解を反映した同記事は、「気候変動が引き金となるこれら危機により、政府が転覆し、テロリストの活動が活発化し、地域全体の安定を揺るがすこともありうる」と警告している。
 政府予算は政策の優先順位、またそれに関してどれだけ進展があるかを示す重要な指標である。変化は起こりつつあるが、大半の国家予算には、従来通りの安全保障の概念が反映されている。
 主にイラクおよびアフガニスタン戦争への関与により、アメリカの軍事予算は第二次世界大戦以来、最も高い水準にある。オバマ政権は、これまでの政権と比べて、気候政策に対してはるかに積極的な姿勢を示しているが、それでも、気候対策費1ドルにつき、65ドルが軍事予算として提案されている(表2)。2010年度予算には、核兵器関連だけで99億ドルが計上されているが、これは、気候対策予算の総額にほぼ等しく、再生可能エネルギーやエネルギー効率向上プログラムに必要な23億ドルの約4倍の規模である。2009年初めに通過した景気刺激策「アメリカ復興・再投資法」のもとで一度限り拠出される資金を含めると、軍事予算vs気候対策予算の格差が少し縮小する。
 世界全体で見ると、アメリカの軍事予算は他国に比べて突出している。ただ、アメリカほど極端ではないが優先分野への偏りは、どの国にも見られる。2008年度、ドイツ政府は気候政策に33億ユーロ(47億ドル)を割り当てた。これは、2005年度の15億ユーロの2倍を超える金額であるが、ドイツ国防省に計上される295億ユーロ(420億ドル)と比べれば、はるかに少額で、軍事予算と気候対策予算の割合は、およそ9:1となる。日本は2009年度に、気候対策予算として4320億円(46億ドル)を計上した。これは、2008年度予算対比では約1000億円増額されているが、防衛予算は4兆7740億円(500億ドル)で、11:1といかに気候対策予算の割合が小さいかが見てとれる。2008年、軍事目的で支出された金額は世界全体で約1兆5000億ドルに達する。一方で世界の気候対策費の総額は、多めに見積もっても年間500億ドルで、30:1と見られる。
 

 マイケル・レナー(Michael Renner)
*ワールドウォッチ研究所の上席研究員であり、グローバル・セキュリティ・プロジェクトのディレクター。

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