前編:【ダボス会議】アジアでの持続可能な開発、答えは「水」にあり《1》
水供給の限界を超えて水を消費している国々は、農業の灌漑用水を転用することで、都市の生活用水と工業用水の高まる需要を満たすことが多い。そして、生産力の損失の埋め合わせをするために穀物を輸入する。1トンの穀物を生産するためには1000トンの水が必要なので、穀物の輸入は、水を輸入するもっとも効率のよい方法だ。
水と食料のつながりは深い。私たちは毎日、何らかのかたちで平均4リットル近くの水を口にしている。毎日の食事を生産するために必要な水の量は、この500倍の2000リットル以上だ。水の使用目的の70%を「灌漑」が占めるのもうなずける。残りの20%は工業用水で、10%は生活用水だ。この3つの部門では一様に水需要が高まっていることから、水をめぐる争いは激化するばかりだろう。そして、いつも負けるのは農業だ。
中国では、地下水の枯渇と灌漑用水の都市生活用水への転用が合わさって、穀物収穫量の増加が困難になっている。収穫量は、1998年の3億9200万トンが頭打ちとなり、2002年には3億4600万トンまで落ち込んだが、その後の4年間は次第に回復している。干上がる灌漑井戸が増えるなか、中国の食料バブルがはじける寸前なのかもしれない。近年、中国は穀物の不足分の埋め合わせをするために、備蓄を取り崩してきたが、もうすぐ不足を補うために世界市場に頼るようになる。そうなれば、世界の穀物市場を不安定にするかもしれない。
アジアは、世界の膨れ上がる水問題を解決するために、先頭に立つことができる。そのためには2つの重要な手順があると私は考えている。まず、水不足がすでに深刻な問題となっているアジアや世界各地の途上国は、人口を安定化させ、水の生産性を高めることで、需要を減らすことができる。2050年までに世界人口に新たに加わる30億人のほぼすべてが、途上国であることを考慮すると、これは途方もない難題である。
水の状況を安定化させるための次の手順は、土地の生産性で行ったように、水の生産性を向上させることである。第二次世界大戦後、2000年までに世界人口が2倍になると予測され、耕作可能な新しい土地がほとんどなかったことから、耕地の生産性を高める大規模な世界全体の取組みが始まった。その結果、土地の生産性は1950以降3倍近くまで向上した。いま、私たちは水でも同様の取り組みを行わなければならない。
(プランB2.0英語版はアースポリシー研究所のホームページで参照可能)
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