温暖化での穀物収穫減収やバイオ燃料への利用など新たな食糧危機が指摘されている。サトウキビやトウモロコシなどバイオ燃料について、レスター・ブラウンのレポート。(「フード・セキュリティー」より)
バイオ燃料の生産で作物を評価する際には、二つの重要な指標がある。作付け地の単位面積当たりの燃料生産量と、その生産と精製に使われたエネルギーを差し引いた、バイオ燃料の正味エネルギー生産量だ。
正味エネルギー生産量では、ブラジルのサトウキビから生産したエタノールが突出しており、サトウキビの生産とエタノールの蒸留に要したエネルギーの8倍に達する。サトウキビの搾りかすの繊維質(バガスと呼ばれる)は、エターノールに蒸留する際に必要な熱を供給するための燃料となるので、外部のエネルギー源に頼る必要はない。ブラジルでは、サトウキビから生産するエタノールの生産コストが、1ガロン当たり60セントなのはこうした理由もある。
フランスのテンサイから生産したエタノールの場合は1.9倍。アメリカのトウモロコシ由来のエタノールは、蒸留に要するエネルギーで天然ガスに大きく依存しており、1.5倍にすぎない。
もう一つエタノールの生産でおそらくもっと将来有望な選択肢は、スイッチグラス(生育が旺盛な多年生草)や成長の速いハイブリッド・ポプラといった木などのセルロースを、酵素で分解する方法だ。エタノールは現在、カナダの小さな実証工場でセルロースから生産されている。スイッチグラスは土壌侵食が生じやすい、あるいは一年生作物の栽培に適さない土地でも生育できるが、このような植物がエタノールの経済的な原料になれば、大きな進展になると考えるアナリストもいる。
農作物を原料とするエタノールの世界市場で競争が激しくなると、将来を握るのはサトウキビとスイッチグラスだ。
スイッチグラスの場合、1エーカー当たりのエタノールの生産量は1150ガロンになる計算で、サトウキビより多い。だが、正味エネルギー生産量は、生産に要するエネルギーの約4倍で、トウモロコシの1.5倍よりはかなり多いが、サトウキビの8倍よりも少ない。
期待されるセルロースの活用はさておき、既存および計画されているエタノール生産設備では、サトウキビ、テンサイ、トウモロコシ、小麦、オオムギなどの農作物を原料としている。たとえば、アメリカでは、2004年に3200万トンのトウモロコシで34億ガロンのエタノールを生産した。使用したトウモロコシの量は、アメリカの膨大な総生産量のわずか12%だが、世界の平均的な穀物消費量では1億人を養える量だ。(前編 了)
後編:【資源】トウモロコシが燃料に。バイオ燃料の可能性《2》
関連:【水資源】水の価格が世界各地で上昇《1》
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