トッププライバシーリーガルサイトマップRSSアイコン My Yahoo!に追加エキサイトリーダーに登録
WorldWatch-Japan

WWJ地球環境メールマガジンEpsilon
メールアドレス
 

Yahoo!検索

  • ウェブ全体検索
  • サイト内検索

トップ | レポート | WWマガジン | ブックス | メールマガジン | リンク | 各種ご案内

トップ > レポート一覧 > Eco-Economy-Update 2008-6

amazon.co.jpで注文する。 →書店で注文する。

ビル・クリントン絶賛、レスター・ブラウン最新刊「PLAN B 3.0」人類文明を救うために発売開始

1984年創刊、世界で読まれている地球環境問題のロングセラー本『地球白書』、最新版発売!

Eco-Economy-Update 2008-6

【漁業資源】保護海域を拡大して、魚場環境を改善する

 

メールマガジン登録はこちらから

【漁業資源】保護海域を拡大して、魚場環境を改善する 

第二次世界大戦後の人口急増と収入増加にともない、記録的なペースで海産物の需要が伸びた。同時に、巨大冷凍加工船の登場により、トロール漁船が遠洋で操業できるなど漁業技術の進歩も著しく、漁師は、増加の一途をたどる世界の需要に答えることが可能になった。その結果、海洋の漁獲量は、1950年の1900万トンから、1997年には過去最高となる9300万トンに達した。この期間に5倍も漁獲量が増加し、人口の伸びの倍以上を記録したのだ。天然海産物の供給量は、世界人口一人あたり1950年の7kg(15.4ポンド)から、1988年には過去最高の17kgに達し、その後14kgに落ち着いている。

人口増加にともない近代的食品流通システムが整備され、より多くの人がこれら海産物を入手できるようになり、海産物の消費が伸び続けている。実際、海産物の需要は、海洋魚場の持続可能な漁獲量を超えるまで膨れ上がっている。現在、魚場の75%では、持続可能な漁獲量以上の魚を捕獲し、結果として、多くの魚場で魚の数が激減し、すでに崩壊した魚場もある。

海洋魚場が直面する多くの危機の中でも、魚場の存続を直接脅かしているのが乱獲である。魚群を探知する音波探知機や、全て合わせると地球を何周もできるほど巨大な流網など新技術が開発され、海洋での漁獲量は一気に上昇した。2003年にネイチャー誌に発表された研究結果は愕然とする内容だった。漁獲量増加により、海洋に生息する大型魚の90%が過去50年で姿を消したというのだ。

世界中で魚場の崩壊が深刻なまでに進んでいる。500年続いてきたカナダのタラ魚場が1990年初めに崩壊し、4万人もの漁師および水産加工業者が職を失った。時を置くことなく、ニューイングランド沖合の魚場も崩壊した。ヨーロッパでもタラ漁場が衰退傾向にあり、魚の数が底なしに減少する勢いだ。カナダのタラ魚場と同様、ヨーロッパのタラ魚場も、回復不能な時点にまで崩壊が進んでいると言えるのかもしれない。乱獲を食い止めることができる自然界ぎりぎりの限度を超えてしまう国は、漁業の衰退や崩壊という現実に直面することになるわけだ。

大西洋では、黒マグロが大量に漁獲され、大型マグロにいたっては、10万ドルもの高値で東京のすし店に流通するが、漁獲量は94%も激減している。仮に黒マグロの漁獲を全て止めたとしても、このような寿命の長い魚類の回復には何年もかかるだろう。

アメリカのチェサピーク湾は、50年前に年間3500万ポンドの牡蠣を水揚げしていたが、現在は、年間100万ポンドにまで落ち込んでいる。乱獲、汚染物質、牡蠣の病気、土壌浸食による沈泥化といった要素が重なりあい、このような悲劇を生んでいるのだ。

欧州連合(EU)加盟国など国家間の協力体制が確立している国々の間でさえ、持続可能なレベルにまで漁獲量を制限する交渉を成立させるのは容易ではない。1997年4月、長い交渉の末、ブルッセルで合意に至り、絶滅が危惧される種と乱獲の対照となる魚類について、EU漁船の漁獲量を最高30%削減することが決められた。EU諸国の足並みが揃い、漁獲量削減を実現したわけだが、これらの合意で漁獲量を削減しても、ヨーロッパ海域の魚場の衰退を食い止める十分な対策と言えないのが現状だ。

一部の魚場が崩壊すれば、残る魚場にさらに大きな負荷を与えることになる。地域の不足がすぐに世界的不足になるからだ。乱獲が深刻化するEU海域で漁獲量制限が課せられたことで、EUの漁船は多額の助成金を得て、カーボベルデ、ギニアビサウ、モーリタニア、モロッコ、セネガル各国の沖合で操業する漁業権を買い取り、アフリカ西海岸での漁業に力を入れ始めた。この海域では、EUの漁船だけでなく、中国、日本、ロシア、韓国、台湾の漁船も操業し競争は熾烈だ。モーリタニアやギニアビサウといった貧しい国では、漁業権による収入が、国家歳入の半分以上を占めることもある。しかし、アフリカの魚場も崩壊しつつあり、アフリカの人々には不幸としか言いようがない。

世界の海産物供給で問題となっているのは、乱獲だけではない。海洋で生息する魚類の約90%が、産卵場所として、沿岸湿地、マングローブ沼地、河川を必要とする。熱帯・亜熱帯諸国のマングローブ林の半分以上が消失し、先進国の沿岸湿地の消失面積はさらに大きい。地中海の多くの魚場にとっての貴重な産卵場所となるイタリアの沿岸湿地は、95%も消失しているという。

海洋温度の上昇によるサンゴ礁の死滅および、大気中の二酸化炭素濃度上昇にともなう海洋酸性化、さらに汚染や堆積被害が、熱帯・亜熱帯海域に住む魚類の繁殖地を脅かしている。生体サンゴの90%が消失すればサンゴ礁が死滅したと見なすが、2000年から2004年にかけて、世界でサンゴ礁の死滅が11%から20%に拡大した。残るサンゴ礁の約24%も、近い将来死滅の危機に直面し、さらに26%のサンゴ礁が、今後数十年で深刻に劣化すると見られている。その原因は人間がますます大きな負荷を与えているからに他ならない。サンゴ礁の死滅が進めば、サンゴ礁に依存する魚場の崩壊も避けられないのだ。

農業肥料や下水放流による栄養素流出で『デッドゾーン』が出現するなど、汚染も魚場崩壊を引き起こす原因である。アメリカでは、コーンベルトと呼ばれる中西部農業地帯から流出した栄養素や河川沿いの都市部から排出された下水がミシシッピー川に流れ、メキシコ湾に注がれている。富栄養化により藻類ブルームが大繁殖し、死んで分解する際に海中の遊離酸素を大量に消費するため、酸欠状態となり魚が死滅するのだ。このため、メキシコ湾には毎年夏になるとデッドゾーンが出現し、その規模はニュージャージー州の面積に匹敵する大きさにまで広がることもあるという。世界の海には、200以上ものデッドゾーンが出現し、魚が住めないためトロール漁船の姿も消えた『海の砂漠』が生まれているのだ。

数十年にわたり、各国政府は、魚種単位で漁獲量制限を課すことで、特定の魚場を保全しようとしてきた。この取り組みが成功した例もあるが、失敗し魚場の崩壊を招いた例もある。近年、別のアプローチを取るべきだという声が高まっている。海洋保護区、海洋公園を指定するという取り組みだ。これらの保護区では漁業が制限され、自然の養殖場のような役割を果たし、周辺海洋の魚の個体数増加に大いに貢献している。

2002年、ヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議で、沿岸諸国は、国ごとに海洋保護区ネットワークを構築することを約束した。各国のネットワークを集結すれば、世界の海洋保護区ネットワークが構築できるはずだ。2003年ダブリンで開催された世界国立公園会議で、各国代表は、各海洋生息地の20〜30%を漁業禁止区域に指定すべきだと提言した。現在指定されている海洋保護区は、それぞれ規模は大きく異なるが、海洋全体では0.6%に過ぎない。飛躍的な拡大が求められている。

ケンブリッジ大学、環境保全サイエンスグループのアンドリュー・バルムフォード博士率いるイギリスの科学者チームが、大規模な海洋保護区の運営費を概算し、世界の海洋の30%を海洋保護区に指定した場合の管理費用は年間120億〜140億ドルになると発表した。世界的な海洋保護区ネットワークを構築する上で課題となるのは、700億〜800億ドルに及ぶ年間海洋漁獲高を維持、または増加する可能性は残っているか、そして、100万の新たな雇用を実際に創出できるのかという点であろう。

161名の主要な海洋科学者が調印した2001年の声明は、世界的な海洋保護区ネットワーク構築に向けて緊急行動を起こすよう呼びかけている。海洋保護区を構築すれば、驚くほど早く海洋生物が回復すると調印した科学者は訴える。海洋保護区をひとつ指定すれば、1年ないし2年で魚の個体密度は91%、魚の平均体長は31%、種の多様性が20%増えると主張するのだ。

海洋保護区の構築が、長期的な海洋生態系保護の取り組みで最優先課題であることは間違いない。しかし、その他の対策も同時に講じなければならない。そのひとつは、世界で200あまり出現するデッドゾーンの原因となる肥料流出や未処理の下水による富栄養化を緩和する取り組みである。

そして、何といっても、各国政府は漁業への助成金撤廃を断行すべきである。トロール漁船の数があまりに多く、漁船が漁獲可能な量は、海洋が持続可能な漁獲量の倍近くに達している。現在、漁師は、各国政府から220億ドルもの助成金を受け、海の魚を空っぽにしている。この助成金よりはるかに安い120億〜140億ドルを拠出するだけで、世界の海洋保護区ネットワークを管理し、魚場環境を回復することができるのだ。
レスター・ブラウン

その他のレポート
「海のエコラベル」が持続可能な漁業資源を守る
インドネシアの珊瑚礁でくり広げられる海底戦争

【地球環境問題の書籍をオンラインで購入(ad)】

 


翻訳提供/禁無断転載
WorldWatch-Japan.org


広告について

RSSで、あなたのホームページやブログに地球環境問題レポートを載せませんか?

My Yahoo!に追加エキサイトリーダーに登録はてなRSSに追加Subscribe with livedoor Reader

ページトップへ
Mail
Copyright (C) 2000-2010WorldWatch Japan, All rights reserved.  <禁無断転載

地球白書 2009-10特集地球温暖化抑制 /地球白書英語版State of the World 2009: Into a Warming World / レスターブラウン プランB4.0

ワールドウォッチジャパンクラブ会員募集中 / 地球環境問題メールマガジン(メルマガ)配信中 / 地球環境総合誌(雑誌) / 地球環境問題RSS配信中 /
中国・世界の地球環境問題レポート/ニュース / 環境教育 / 地球白書.jp / 地球環境問題の書籍、関連本

EarthPolicyInstitute WorldWatchInstitute