最新の報告によると、北極では現在、地球上の他の場所と比べ、二倍近い速さで温暖化が進行している。温暖化は北極点の氷の融解を加速し、近隣地域に住むホッキョクグマなどの野生生物や人々、世界中の海面、地球全体の温暖化に深刻な影響を及ぼす。
世界8か国からなる「北極気候影響アセスメント」は、アラスカやカナダ西部の冬の平均気温が過去50年間で最大4℃も上昇したと発表し、温暖化を20世紀に起きた温室効果ガス排出という人的な原因によるものだとしている。北極の気温は2100年までに更に4〜7℃ほど上昇し、周辺の海氷や巨大なグリーンランド氷床が溶けるのを加速する可能性がある。北極の夏の海氷は、過去30年間で面積にして平均15〜20%も小さくなり、1960年代後半以降最大40%も薄くなってしまった。今世紀中に、氷がほぼ完全に溶けてなくなってしまう可能性もある。その場合、氷に代わって、日光の熱を吸収する色の濃い海面が広がり、地球全体の温暖化が加速するという波及効果が広がるだろう。
同アセスメントはまた、グリーンランドの氷床やアラスカおよびカナダの氷河の融解のよって、地球の海面が次第に上昇していくと警告している。表面の融解が起こっているグリーンランド氷床の面積は、1979〜2002年の間に16%拡大し、2002年には過去最大の融解が起こった。何世紀も先の話ではあるが、氷床すべてが溶けると、海面は約7メートル上昇し、世界のほとんどの沿岸地域を水没させるだろう。
ホッキョクグマ、オットセイや海鳥など、氷縁部に餌を求めている動物もまた、北極の気候変化に苦しみ始めている。カナダ北部では、氷原の縮小のために、ホッキョクグマの間に飢餓や体重減少が起こっており、科学者たちは今後20年の間に、いくつかの地域は、クマにとって生息不可能になるだろうと予測している。氷や永久凍土の融解はまた、伝統的狩猟や漁業の可能な期間を短縮し、深刻な海岸侵食、洪水、建物の地盤のゆるみを引き起こすなど、極北の先住民の暮らしを脅かしている。
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