中編:【水資源】水の価格が世界各地で上昇《2》
水の補助金は途上国に限られたことではない。たとえば、カリフォルニア州セントラルバリーの農家は、同州の水使用量の約5分の1を占めながら、1立方メートル当たり平均1セント強と、ロサンゼルスの飲料水の価格のわずか2%、水の補充コストの10%に過ぎない。ユタ州中央部でのアメリカ政府による新規計画に関するある分析によると、この計画によって供給される水のコストは、灌漑業者が支払う金額の40倍近くになると予測されている。
水は、生命を維持させ、貴重で、ますます不足する資源だというのに、現在は、まるで価値がないかのように管理されている。もっと分別のある方法で水を管理するための重要なステップのひとつは、水の価格に価値と希少さを反映させることだ。そうすることで、特に低所得世帯に打撃を与えるような、価格の大幅な値上げが生じる可能性があることは言うまでもない。
この問題を回避する最善の方法は、使用水量が少ない場合(基本的なニーズを満たすために必要な量)は安価で、使用水量の増加に応じて水量区分ごとの単価が高くなるという料金体系を活用することだ。
たとえば、大阪市では、毎月の使用水量が10立方メートル以内までは定額で、超過した場合は、1立方メートル82セントから3ドルまで段階的に料金が上がる。さらに、貧しい世帯でも安定した水供給を確保できるようにすることで、民間業者の価格つり上げから守ることもできる。
妥当な水の価格を設定することで、短期的には政治問題を引き起こす可能性はあるが、長い目でみれば著しい効率向上が期待でき、政府予算のムダな流出をなくすこともできる。価格が高いと、農家や業界は水の利用の効率化を進め、一般家庭も省水型の家電製品を購入するようになり、水の無駄遣いも抑制されるだろう。効率向上の多くは比較的安価で、ほとんどは元が取れる。たとえば、温水の使用量を減らすための改善は、水だけでなくエネルギーも節約できるので、いずれは元が取れる。
エネルギーと水のつながりは実に多い。採水や水の輸送と処理には、大量のエネルギーが必要なだけでなく、1970年代の石油価格ショックが省エネを促進したように、水の価格設定に本当のコストを反映させることで、工業、農業、一般家庭でも似たような節水努力が促されるだろう。
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