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Cover Story

人口大国のインドと中国にエイズがやってきた
世界でもっとも人口の多い両国はこの流行にどう対処するのか?

アン・ハング(AunHwang)

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中国の感染者は推定100万人

  中国では現在のところ、エイズの影はかすかに見えてきたといったところである。推定では、現在のHIV感染者は50万人から100万人と見られている。人口13億のこの国では、これは国民の感染率としてはきわめて低レベルで、せいぜい0.08%である。だが流行の規模はごく小さいものの、ウイルスはほぼあらゆるところに存在しているようだ。国内31省のすべてで、エイズの症例が報告されている。
インドと同じく、現れ始めたばかりのこの伝染病の性格は、地域によって非常にちがっている。中国で最初にHIV感染者が集中したのは、ラオスおよびミャンマーと国境を接する南部の雲南省であり、1990年には、中国のHIV感染者の90%近くがこの地域の住人だった。雲南省は黄金の三角地帯の縁にあって、国内の麻薬静注常用者の大部分(なかなか実態はつかめないが)が住んでいる。だが現在では、常用者の急増もあって、エイズウイルスは雲南省をはるかに越えて広がっている。1990年代半ばまでには、麻薬注射常用者の新たな感染例の半数は主として南部の、雲南省以外の省で発生している。雲南省の東隣の広西壮族自治区の調査では、1993年にはゼロだった麻薬常用者の感染率が97年までに40%に増えていた。
昨年の中国の公式統計では、登録されている麻薬静注常用者数は1992年時の2倍の、60万人に達した。常用者の数が増えるにしたがって、注射針を共用する習慣も広まっている。それに関する情報は入手がむずかしいが、中国政府からのもっとも新しい資料に基づいてUNAIDSが推定したところでは、1998年に注射針を共用していた常用者は、前年の25%から60%と増加した。
中国各地―とくに中央部の省の農村地帯では、注射とはまったく異なるかたちでウイルスが広まっている。貧しい人々が小金を稼ぐために血を売ることはめずらしいことではないが、それによってHIVに感染する危険性が高くなる。1998年、中国政府は売血を禁止した(中国では、輸血血液は献血でまかなわれることになっている)。だが血液の需要が増えているために、実際には売血は続いている。非合法な採血所のなかには、同じ血液型の血を貯留させ、貴重な凝固因子や免疫因子をつくるために血漿を抽出して、残った細胞を売血者に再注入しているところがある(再注入すると血液の再生期間が短縮されるので、より頻繁に売血できるようになる)。注射針その他の採血用具もしばしば再使用される。2000年1月、北京南西の陝西省でそのような採血所の一つが摘発されたが、見つかった血漿の入った袋64個のすべてが、HIVウイルスとB型肝炎ウイルスに汚染されていた。
闇の血液売買がどの程度の規模で行われているかはわかっていない。中国のニュースメディアはこの問題について報道することを禁じられているし、外部の研究者は調査を阻まれ、政府役人は決して語ろうとしない。だが、おそらく体制は闇の血液をそうすぐに断ち切ることはしないだろう。正規の供給では足りないようである。もっとも、献血の「自発的」という性格はすでにひどく損なわれている。たとえば香港から内陸に入った広州では、献血の割当量を達成できない労働者組織は罰金を課される。そのため、自分の代わりに献血してくれる「プロの献血者」を雇って罰金を回避する労働者も多い。幾分不正かつ冷淡な感じがするとはいえ、そのような割当制は効果があるという意見もあるだろう。だが、このシステムには欠点が多い。中国では他人に血を与えることをいやがる文化的風土があるが、それが、献血は危険だという広く流布した認識によっていっそう強化されている。残念ながらその認識は正しいのかもしれない。正規の採血センターでさえ、注射針や管を再利用していることがあるからだ(必ずしも意図的に再利用しているとは限らない。悪らつな業者が使用済みの用具を回収し、再包装して、新しい製品として売っている場合もある)。もう一つの不運な結果は、血液が実際に使われたときに生じる。都市部の大きな病院を除けば、中国の輸血血液はおそらくHIVその他の病原体のスクリーニング検査が十分に行われておらず、「プロの献血者」は一般の人々にくらべて感染率がかなり高い。
大都市やとくに開発の進んだ中国南東岸地域では、エイズは主として性感染症(STD)である。少なくとも都市部では、過去数十年間に性的モラルがかなりゆるやかになっているようだ。売春が増えているのも不思議はない。中国全体の売春の逮捕件数はいまや年間およそ50万件を数える。1980年代から売春婦の数は増え続け、現在は300万人から400万人と中国公安局は推定している。梅毒や淋病のような性感染症は、積極的な公衆衛生キャンペーンによって1960年代にほぼ一掃されただが、それが一気に蘇ってきているのである。中国厚生省によると、STDの感染率は年に30〜40%上昇している。これはエイズの増加を予告するものだ。というのは、性的モラルが低下しているからというだけでなく、他のSTDによって性器に炎症が起きると、HIVに感染しやすいからである。
中国各地にHIVが広まるにしたがって、性交渉、麻薬注射、売血、おそらくはそれ以外の感染経路も、ますます重なり合っていくことだろう。その結果は、予測も防止もむずかしいかもしれない。たとえば最新の統計である1998年のデータでは、新たなHIV感染者の数がもっとも多かったのは、雲南省でも広西壮族自治区でもなく、中国北西部の人口の少ない辺鄙な乾燥地帯―新疆ウイグル自治区だった。なぜだろうか?
その答えの一つは麻薬にあるようだ。一見、辺鄙な場所のように思えるが、新疆ウイグル自治区はアヘン取引に深くかかわっている。ここの麻薬静注常用者の感染率は80%近くにのぼることが、いくつかの調査でわかっている。この地域の売春婦も同様に感染率が高いようだ。また産前検診で診療所を訪れる女性のなかにもHIVが現れ始めている。HIVウイルスがここの一般住民のあいだにも侵入し始めたことを示す強い兆候である。だが政府はほとんど関心を見せていない。このことも、この地域の苦境のもう一つの理由を示唆している。新疆ウイグル自治区の住民の大部分は、トルコ系民族のウイグル族である(この地域は「中国領トルキスタン」と呼ばれることもある)。中国国内の他の少数民族と同様、ウイグル族のHIV感染率は非常に高い。中国のエイズ防止・教育計画はそもそもが非常に小規模で、少数民族の間ではほとんど効果を上げていない。おそらく少数民族に対する政府の無関心が、新疆ウイグル自治区の流行の一つの要因だろう。何らかの文化的な「コミュニケーション・ギャップ」もあるかもしれない。
2000年初め、中国科学アカデミー会員を含む、この問題に関心を寄せる中国の科学者のグループが、「エイズは急速に広まっており、その脅威に対して何の行動もとられる気配がない」ことを警告する報告書を政府に提出した。断固とした行動をとらなければ、2010年までに中国では1000万人がHIVに感染すると、中国の全国エイズ予防管理センター(NCAIDS)は言明している。

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