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Cover Story

人口大国のインドと中国にエイズがやってきた
世界でもっとも人口の多い両国はこの流行にどう対処するのか?

アン・ハング(AunHwang)

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社会的弱者の死

  中国とインドの大部分の地域では、エイズはまだ社会の周辺部にいるリスクの高い集団―社会の主流に容認されない、しばしば非合法な活動に従事するグループ―に集中している。それらのグループのうち、もっとも実態のわかっていない集団の一つが、男性同性愛者である。先進国のエイズをめぐる議論では同性愛が重要性をもっているが、中国やインドの同性愛者の実態はほとんど知られていない。だがインド南東岸最大の都市マドラスでの調査は、インドの隠れた同性愛者たちの凶兆とも言える一つの特徴を明らかにしている。彼らのほとんどは、完全なホモセクシュアルではないらしいということだ。大部分が妻帯者なのである。
結婚している男性同性愛者、売春婦を買う男性異性愛者、麻薬静注常用者とそのセックスパートナーというように、エイズはまだ社会の周辺部の人々の病気かもしれないが、インドでも中国でも、周辺部と社会の主流を結ぶ大きな橋がいくつもある。エイズウイルスはそのような橋を比較的ゆっくりと渡っていく傾向があるかもしれない。もしも、ほとんどが周辺部でとどまっていれば、対策はより簡単だろう。だが、そのシナリオでさえ大きな危険性をはらんでいる。犠牲者に対する冷淡な態度と、病気そのものに対する無関心が助長されることになりかねないからだ。
まず無関心について考えてみよう。もしエイズがごく一部の限られた人の病気だというふうにとらえられれば、そのグループに属さない人は自分も感染する危険性があるとは認めたがらないだろう。カリフォルニア大学バークレー校の研究者スニータ・クリシュナンはこの3年間インド南部でHIVについて調査し、この傾向をじかに経験してきている。「エイズはムンバイで商売をしている売春婦だけの問題だという意識がある。そういう人たちとセックスしない限り、自分たちとは関係ないと思っている」と彼女は述べている。このような態度は、感染の危険性を簡単に高めてしまう。
また、この「そういう人たちと自分たち」という意識は、すでに感染している人々の苦しみをいっそう大きくする。エイズに感染しやすい少数グループに烙印を押すことの影響の一つは、結局エイズの感染者すべてが烙印を押されがちになることである。インド南部のカルナタカ州で女性のためにHIVカウンセリングをおこなっている非営利組織Swathyaの創立者の一人ラジェシュ・ヴェダンタンは、大量の不正出血で病院にきた妊婦の話を覚えている。その女性は承諾を求められることもなく、知らないうちにHIV検査をされて、感染を発見された。その病院の医師はHIV陽性であるということを彼女に告げず、出血箇所にガーゼを当てただけで病院から追い出し、二度とくるなと言った。彼女がSwasthyaを訪れたころには、ひどい状態になっていた。このような非人間的な態度は、病気自体の広まりをいっそう拡大する。

不必要な苦しみを避ける

  北京では女性たちが竹ぼうきで道路をきれいに掃いている。空港では営業許可をもつタクシーが列をつくって、制服姿の警備員が乗客を割り当ててくれるのをじっと待っている。だが、この中国の首都からさほど遠くへ行かないうちに、なぜかあらゆるタクシーのメーターは壊れ、ごみの散らばった通りには物乞いが群がる。エイズ対策の中国の努力にも、これと似たような二面性がある。公衆衛生と社会福祉の強い伝統をもつ一党独裁主義国家として、中国はエイズ対策を好調に進めているように見えるかもしれない。だが、中国は公衆衛生サービスに国内総生産の約0.7%しかかけていない(アメリカはその対極にあり、公衆衛生サービスの予算は6%にのぼる)。したがって中国のエイズ対策は、売春、麻薬使用、売血の取り締まりといった力づくの戦術でしかなく、効果はほとんど上がっていない。
エイズについての公衆教育は、検閲制度によって阻まれている。エイズに関する政府発表の文言を見ると、性的な問題を語ることに非常な当惑を感じていることがよくわかる。「政府は国民に対して、自分たちの言葉や行動が中国国民としての基準に則しているかどうかに注意を払うよう促すものである」―エイズが現れ始めたころのある公式声明である。さらに、国民は「性的決断をする場合には、するべきこととそうでないことをよく見きわめ、不必要な苦しみを避ける」べきであると、問題の危急性を覆い隠して続けている。時代は変化しているというのに、1999年12月に中国のテレビで初めて全国放送されたエイズ予防のためのコンドーム使用の広告は、放送後わずか2日で打ち切られた。セックスに関する商品の広告を禁じる法律に違反しているというのが、その理由である。
エイズの治療と追跡調査のための技術的な基盤も不足している。NCAIDSは、1997年に発表した最新の報告のなかで、中国にはHIV検査のできる試験所が400か所しかないと述べている。およそ300万人に1カ所の割合である。また、エイズその他のSTD感染者治療の専門知識をもつ医療従事者も足りない。中国の国営通信社―新華社によると、南部の都市、深にあるSTD診療所職員に対し医学的知識の試験を行った結果、合格したのはわずか23%だった。エイズ研究者で中国科学アカデミー会員のザン・イー(ZengYi)によると、地方政府の役人は感染率の高い地域という烙印を押されるのを恐れて、HIVに関するデータの収集に乗り気でないという。それ以上に問題なのは、エイズ対策の予算が明らかに減少していることだ。40%の予算削減の結果、疫学調査プログラムのHIVスクリーニング検査件数は、1997年の340万件から98年の130万件に減少している。
世界最大の民主主義国インドも、無関心でいられる理由は少しもない。エイズが現れ始めたころ、インドの一部の政治家は外国人との性交渉の禁止、HIV陽性者の隔離、伝統的な価値観への回帰を主張した。この声は、他の国々でも耳にした内容である。外国人との性交渉禁止の提案は、1988年にインド政府の主任医学研究者A.S.パインタルによって出されたものだが、国内外から非難の嵐が巻き起こってあえなく消えた。インド西岸のゴア州では、HIV陽性の疑いがある人を強制的に検査し隔離する法律がつくられたが、何度も抗議がくり返され破棄された。国レベルでは、HIV陽性者あるいはHIV陽性の疑いがある人を強制的に検査し収容することを定める「エイズ防止法」が1989年に提案されたが、成立はしなかった。
1992年、インド保健・家庭福祉省は、エイズの予防と教育を担当する「全国エイズ防止機関(NationalAIDSControlOrganization:NACO)」を設立した。NACOはエイズの動向を監視するサーベイランス・システムを設置したが、限られた予算が予防対策を阻み、施療を不可能にしている。エイズの進行を遅らせる抗レトロウイルス療法の「ドラッグカクテル[数種の薬剤の混ざった液体]」は、1か月270ドルから450ドルもかかる。インドの国民一人当たりの平均年間所得は、わずか444ドルである。急速に拡大している中流階級でさえ、一人当たりの平均年間所得はわずか4800ドルで、このドラッグカクテルの1年分の値段にほぼ等しい。また、エイズによって免疫系が損なわれた人を最終的に死に至らせる、多くの日和見感染症に対する予防的ケアもない。先進国では、このような感染症はたいてい比較的安価な投薬で何年も食い止めておくことができるのである。中国と同様、インドは公衆衛生サービスに国内総生産の約1%しかかけていない。ハーバード大学で国際貿易を教えるジェフリー・ザックス教授は、この数値は「唖然とするほど低い」と言っている。

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