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Cover Story

人口大国のインドと中国にエイズがやってきた
世界でもっとも人口の多い両国はこの流行にどう対処するのか?

アン・ハング(AunHwang)

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カルカッタ市の売春婦とエイズの未来

  1989年、タイの売春宿の調査で売春婦のあいだにHIV感染が増えていることがわかったとき、タイ政府はいくつかのNGO(非政府組織)と協力して、コンドーム使用を訴える大規模な公衆教育キャンペーンに着手した。この「100%コンドーム・プログラム」では、売春宿やマッサージパーラーにコンドームを配り、STDの治療を受けにきた男性の感染経路を調べて、コンドーム使用を強制した。開始から3年で、売春宿のコンドーム使用は14%から90%に増加し、国立診療所で新たなSTDの治療を受けた男性の数は、95年までに10分の1に減った。その1年後には、軍隊の徴集兵のHIV感染率が2%以下に下がり、93年半ばの半分以下となった。
タイがとった早期対策の教訓は明らかだ。モラルに訴えるよりも、人々にこれは医学的な問題であるという明確な意識をもたせることが重要だということである。公衆教育は、少なくともある程度の強制力のバックアップがあれば、効果がある。この方法が中国やインドでは効かないと決める理由はどこにもない。カルカッタ市ソナガチ地区の売春婦の例を考えてみればいい。数々のハンディにもかかわらず、この女性たちはエイズについて自らを教育しただけでなく、組合をつくったのである。この非公式な組合に会費を払って所属する3万人余りのメンバーは、労働条件を改善させ、他の売春婦たちにエイズについて教育し、読み書きを教えるクラスをスタートさせ、児童売春婦の数を減少させている。彼女たちはコンドームの必要性をよく理解しており、使用を義務づけたがらない売春宿の経営者に対して、共同行動の脅しさえかけた。その結果、彼女たちのHIV感染率は5%にとどまっている。インドのその他の都市の60〜70%という売春婦の感染率にくらべると、非常に低いレベルである。
もちろん、コンドームや安全なセックスについてフランクに話すことは、ほんのスタート点にすぎない。効果的なエイズ対策プログラムには、信頼性があり、被験者のプライバシーが守られ、かつ自由意思によるHIV検査体制も不可欠である。それは感染者の権利を守り、治療を保障するものでなければならない。だが、おそらく最大の課題は、社会から取り残されているリスクの高い人々のために、何らかのかたちの長期的支援体制を築くことだろう。ソナガチ地区の売春婦が示したような行動を促す支援が必要だ。スニータ・クリシュナンが言うように、「HIVは社会的、経済的不平等と貧困に密接にかかわっている。このような問題が残っている限り、HIVは消えないだろう」から。
そのことが、おそらくタイのエイズのその後から学ぶべき教訓の一つかもしれない。アジアを襲った経済危機で、タイのエイズ対策プログラムの資金は激減した。支出は1997年の9000万ドルから98年の3000万ドルに急激し、99年と2000年にはやや盛り返して4000万ドルとなった。資金の激減は、タイのアプローチの弱点を浮き彫りにした。エイズは、売春婦とその客以外の住民のあいだで、ほとんど野放しで進行していたのである。タイの対策プログラムには、一般に男性の同性愛者は含まれていない。麻薬静注常用者も同様で、このグループの感染率は40%を超えている。最悪のニュースは、いま産前検診にくる女性の感染率が増加していることである。
他の多くの地域と同様、中国でもインドでも売春婦や同性愛者、麻薬常用者は人々の侮蔑と法的制裁の対象となることが多い。だが、エイズ対策を本気で進める気なら、実際的な意味でも人道的な意味でも、最優先しなければならないのはこの人たちである。すべての公衆衛生プログラムの基盤である平等主義の理念に、私たちはいったい本心からどれだけの投資をしたいと思っているだろうか?
エイズは私たちの人間性を試す厳しい試験である。HIVウイルスは何度もくり返し、私たちにその恐るべき教訓を教えている。犠牲にしてもいい人間など、この世には一人もいない。アン・ハング(AnnHang)*カリフォルニア大学医学部在学。ワールドウォッチ研究所のインターンをしていたことがある。エイズワクチン?魔法のカプセルはない「みな、魔法のカプセルを期待しているんですよね」と言うのは、HIVワクチン研究予算の増加を訴えているアメリカの活動家ネットワーク「エイズワクチン運動連合(AIDSVaccineAdvocacy)」代表のクリス・コリンズだ。「しかしエイズワクチンは、おそらくそういうものにはならないでしょう」。
この数年、ワクチンの研究がかなり進んだのは事実である。現在、VaxGenというカリフォルニアに本社のある企業が、有望なワクチン候補剤を使った初めての大規模な臨床試験をおこなっている。2001年11月には、3大陸の8000名のボランティア被験者を対象にした試験の中間分析がおこなわれることになっている。このような努力はやがては大きな実を結ぶだろうが、世界中に猛威をふるった過去の伝染病――天然痘を撲滅したワクチンのような成果は期待できないだろうと、多くの専門家は考えている。
一つの大きな障害は、エイズウイルスの変異率である。ウイルスの遺伝子が8時間に1回複製されるたびに、その遺伝子の少なくとも1個に突然変異が起きるようだ。HIVの場合、他のどの有機体とも同じく、突然変異体のほとんどは結局、進化的にゆきづまる。だがすべてがそうというわけではない。HIVはすでに世界中で12種以上の異なる亜類種を生み出しており、一つのワクチンがすべての亜類種に効くかどうかはわからない。とくに中国ではHIVの種類が非常に多様で、わかっている亜類種のほとんどが検出されている。世界に散らばるこの亜類種のモザイクは、医療面の南北格差をいっそう広げることになるかもしれない。先進国は、発展途上国に多い亜種のワクチン開発に、果たしてどれだけの研究開発投資をするだろうか?
たとえ有効なワクチンが発見されたとしても、研究者は投与を決定するにあたって、非常に大きな問題にぶつかるだろう。たとえばワクチンが50%の効果しかなかったとする。そのワクチンを投与される人々が、安全なセックスや清潔な注射針の使用に留意しそうもないような場合、そのワクチンは認可すべきだろうか?
そのようなワクチンでも使うべきだという強い声が広くある場合、発展途上世界の感染リスクの高い集団に接種する費用は誰が払うのだろうか?
ワクチン研究者は、この病気の社会学的側面はHIVの生物学的側面に劣らず、対応が難しいことを痛感するだろう。もちろん、有効なワクチンは流行を防止する貴重なツールとなるだろうが、すでに使われている他のツールに完全に置き換わるものではないようだ。

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